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大学の山賊たち

1960年、東宝、関沢新一脚本、岡本喜八脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

丸久デパートの社長、尾形久三郎(上原謙)は、支配人(平田昭彦)や宣伝部長から、スキーを宣伝するための16ミリフィルムを見せられ、スキーブームの実態報告を受けていたが、まだ多額の宣伝費が余っている事を知り、自分がその予算でスキー客に無料で提供する山小屋を買ってさらにスキーの宣伝に役立てようと、自ら物件探しに出かける。

社長が向った雪山には、「山賊」と呼ばれる大学の荒くれ山岳部の5人、お頭(山崎努)、胃袋(佐藤允)、宇宙(久保明)、税務署(江原達怡)、ゲネ(ミッキー・カーチス)が、山頂のかもしか小屋を目指して、雪の中でビバークしていた。

冬にかもしか小屋まで到達した物は今まで誰もいなかったからだ。

同じくその山には、生理休暇を1年分まとめて遊びに来ていた丸久デパートの5人の女性店員たち、姉御(白石由美)、カレー(横山道代)、オシメ(上原美佐)、オサル(柳川慶子)、オトラ(笹るみ子)がいた。

そんな雪山に、南の某国の皇太子様がお忍びで遊びに来ると新聞報道されたのを見た村の警官丸山(沢村いき雄)は、列車から降り立った尾形を、てっきりその警備のために東京からやって来た刑事部長だと勘違いしてしまう。刑事部長が来るという連絡をあらかじめ受けていたからであった。

丸山巡査から、この山には、かもしか小屋の他に、30年前の大雪崩の犠牲になって亡くなった丹羽一作という山の画家が住んでいた丹羽山荘という小屋があるのだが、そこに人が近づくと大事故が起こる「お化け小屋」と呼ばれているのだという。

さらに、そこには、夫がいまだに生きていると信じ込んで住んでいる、少し頭がおかしな未亡人(越路吹雪)と、孤児だった子供の頃から夫婦が育てて来た六助(堺左千夫)という下男がいまだに住んでいるのだとも。

「天狗の壁」という絶壁に挑もうとしていたお頭たちは天候の急変を察知し、途中で出あった女性グループ共々山を降りかけたところで嵐に遭遇、雪の中で倒れている尾形を発見するのだが、彼のうわ言から「お化け小屋」の事を思い出し、そこへ全員避難する事になる。

小屋では、思いのほか陽気な未亡人と無邪気な六助の歓迎を受けるが、その小屋には、丹羽一作(上原謙-二役)の幽霊が同居していたのである。

その頃、村の駅には、皇太子とその侍従長を名乗る二人の男が現れ、たまたま買い物で下山していた六助に案内され山に登るのだが、実はその二人、その後から到着した本物の刑事部長(土屋嘉男)が追っていたケン(中丸忠雄)とサブ(若松明)というギャングだったのである。

難所といわれる五郎兵衛谷で、二人のギャングに追い付いた警官隊だったが、二人の銃撃により30年前と同じ大雪崩が発生、1Kmに渡る唯一の登山道が閉ざされてしまう。

「お化け小屋」に閉じ込められ、復旧には10日以上はかかると覚悟したお頭たちは、わずかな食料を全員で分け合って生き延びようと計画をたてるが、そんな小屋に、雪崩の犠牲になったと思われていた六助が、二人のギャングを連れてひょっこり帰ってきてしまう…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

山崎努のデビュー作である。

一方で「アルプスの若大将」や「クリフハンガー」を連想させるイメージがありながら、ベースは雪山を舞台にした「陽気なお化け屋敷もの」とでもいおうか、ユーモアファンタジーと閉ざされた山荘での極限サスペンスが合体したような、不思議な発想で構成された娯楽作になっている。

自分のサルマタの湿り具合で山の天候を予測する胃袋役の佐藤允や、産婦人科専攻の医学生ゲネを演じるミッキー・カーチスらユニークキャラクターたちが、後半、意外な活躍をするのが楽しい。

正体がばれたギャングたちへの接し方で、若者たちの結束が乱れはじめる辺りから、物語は二転三点していく。

山荘内部などを除けば、大半が本当の雪山ロケで撮影されているのもすごい。